ひとり暮らし

実家を出て17年、ひとり暮らしです。


正確には同棲期間も挟んで17年。




実家では自分の部屋がなく、ずっとひとり暮らしに憧れていた。

とはいえ会社員時代は会社都合での引越の繰り返しで、寝るための場所でしかなかった。



婚活をしていた20代後半、同棲していた30代はとにかく、「誰かのための部屋」でした。


誰かと座るためのソファ、誰かとご飯を食べるためのテーブル、人が来たら居心地が良さそうなファブリック、お洒落に思われそうなインテリア。



いつでも誰かと暮らせる部屋。次に引越するのは二人で借りるときだと常に思っていた。





そんな先入観で暮らしていた部屋、当然誰もいなくて一人で過ごす方が圧倒的に多いわけで。

一人でいるのに、誰かが座るかもしれない席を空けて暮らす部屋。


ぽっかりした気持ちさえ、当たり前すぎて何も疑問に思わなかった。






同棲をやめたとき、なんて居心地の悪い部屋だろうと思った。

ここで一人で暮らすとかありえない。

でもまた他の誰かと暮らすのはもっと無理。



二人で選んだ色のソファを買い替えて、座り心地を無視したデザインソファを選んだ。

早く欲しかっただけのテーブルを買い替えて、ゲームもお絵描きもなんでもできそうな大きなテーブルを選んだ。

自分だけの趣味のフィギュアやグッズをいくらでも飾れる棚を壁一面に置いた。

まっさらな壁にプロジェクターを置いて、

ワタシだけの食器

ワタシだけのコップ

ワタシのすきな香り


2年かけて家中を入れ替え、最後に欲しくてずっと手を出せなかった椅子を1脚買った。





椅子もお皿もお箸もコップもふたつ買う必要なんてない。

好きなものをたくさん買って好きなように使っていい。

1脚だけ椅子を買うなんて考えたことなかった。


誰かと使うときはお揃いじゃなくても、二人用じゃなくても、好きなもの使えばいい。





歳を重ねて失うものもあるけど、失いたかったものも順調になくせているなら悪くない。


SNSで語れるほどお洒落じゃないし、誰かのお手本になりたいとも思わないワタシだけの部屋。





40歳でやっとはじまった憧れのひとり暮らし。