結婚のこと

40歳、独身。




20代、結婚したいとかしたくないとか考えたこともなかった。


大学進学するときも、就職するときも、それが当たり前だった。

結婚もそういうものだと。

みんなするし。




学生のときお付き合いしていた方が社会人で、卒業したらすぐ結婚したい的なことを言われ、流石にそれは… と濁してそのまま卒業も待たずにお別れしたことがあります。


今思えばそれさえも女子だからって社会に出ずにすぐ結婚するとかはちょっと… という世間体的な気持ちの方があったと思う。

本当に好きだったら結婚したのかな。

ちゃんと好きだったけど。

そもそも本当に好きってなんだろな。




社会人になっても恋人という存在が出来ることはなく、人に言えないような関係ならあったりなかったりまあそれは置いといて、


20代半ば、結婚しないとまずいのでは?と第一次結婚ブームに焦る。



当時の婚活市場はパーティーが主流。

早く結婚してほしい親の後押しもありお見合いもチラホラ。

とにかく結婚するためには活動が必要だと。



しかし不思議なもので、こんなに結婚したいのに誰のことも好きにならない。

気に入ってもらえてもなにも思わない。

お付き合いしてみないとわからないと急かされてもお付き合いする気にもなれない。

妥協の線引きがわからない。

理想もわからない。

なんで結婚できないのかがわからない。


次第に仕事の多忙にどんどん婚活が侵食されてきて、いつのまにか30代。






会社を辞めるタイミングで、ふと考える。




なぜ会社をやめたいのか


なぜ結婚したいのか





会社を辞める理由は明確にある。

みんなが正社員だから自分もとは思わず、定職に就かないことをすぐに決められた。


でも結婚したい理由はみんながするから以外に何もなかった。



みんなと違うから焦る。



「好きだから結婚したい」以外の理由があるのだろうかと、はじめて立ち止まった。



なぜ親も親戚も結婚を急かすのか。


出産を見据えているから。




それが明確に見えたときに、自分の中で出てしまったはっきりした答え。







「ワタシ、こども、うみたくない」







結婚したいとあんなに思ってたのに、親になりたいと全く思わなかった。


こどもという生き物が嫌いなわけじゃない、

かわいいし、見かけたらニマニマするし、みんなスクスク育てよと思う。



でもワタシは親になりたくない。

子孫を残したいと思えない。


そう思うことに理由がなくて、親には十分過ぎるほど感謝してるし、愛されて育ったと思ってるのに、自分は親になりたくない。

なんでそんな風に思ってしまうんだろう。

ワタシは何かおかしいのでは?


今でも完全には納得できてないし、多分一生わからないような気もしてる。

理由がわかって言語化できたらどんなにいいか。





でもこれがきっかけで、婚活をやめられた。

あんなに焦っていた結婚に興味がなくなり、みんな結婚するのは、結婚したい理由がちゃんとあるんだなと思えるようになった。




不思議なもので婚活をやめたらすぐに好きな人ができて、結婚という目的地がなくても誰かと一緒にいたいって気持ちあったよな… と忘れ去った感覚がどんどん蘇る。


そうは言っても30代。

こどもをうみたくないワタシと結婚を考えずに一緒にいたいと思う人なんている…?と新たな不安を覚える。


奇跡的に結婚願望ゼロの方で、これは運命ではと数年ぶりの恋愛に舞いあがるワタシ。

まあそれならそれでうまくいくとも限らないのが恋愛ですけどね。




結婚から解放され、好きな人と一緒にいられて、無敵状態だったワタシを地の底に落としたのは母親でした。


まあ冷静に考えれば結婚もせずに同棲してるらしい30代の娘が歳を重ねてゆくのは不安でしょう。


母は結婚してくれない人とずっと一緒にいていいのかと心配していた。

相手は先のことまで考えてくれるのかと。


恋人が悪者になってしまうのが耐えられなかったワタシは、こどもをうみたくないことを思いきって話した。




予想はしてたけど、キツかった。


母は泣いた。


自分の育て方が悪かったのかと。


今の恋人と一緒にいるからそう考えるようになってしまったのかと。


こどもをうみたくないなんておもうはずがない。


自分はうめなくてもまだ育てたいくらいだと。




何も言えなかった。


母の言うことは何ひとつワタシに当てはまらなかった。


わかってもらえないとは思ってたけど、親に理解されない辛さは想像以上。


わかろうと思ってもくれないのかと。





今ならわかる。ワタシを産んでここまで育てた人がこどもをうまない人生を考えるはずがない。

だからワタシがここにいるのに。


今はもうなにも責めず何も言わないことが、母なりのワタシへの理解なんだと捉えてる。





コロナ禍になり恋人とは自然消滅的におわっていった。

家族でもないのに一緒にいることで感染を心配するのが嫌で、彼が実家に戻ったのが最初の理由だったけど、再び一緒に暮らすことはなかった。



何年一緒にいても、共に暮らしていても終わる。

結局彼の思う「結婚したくない」の理由がこういうことなんだなとわかった。


彼は家族がほしくなかった。

ワタシは彼以外の家族がほしくなかった。



結婚したい、したくないの2択ではない。

結婚したくない中にもいくらでも選択肢はある。



誰かと共に生きるって難しいんだな。

ワタシは誰かと共に生きられるのかな。




そんなこと考えながら、今は誰かと共に生きない生活を少しずつ楽しんでいます。


誰かと共に生きなくても、ひとりぼっちというわけではないから。


家族がいて、友達がいて、大切にしたいひとはたくさんいる。

特別な誰かではないひとたちだってみんな大切なひとたちだと日々かみしめてる。







世界はひとつじゃないし、僕らはひとつになれないのだ。(ばらばら/星野源)